『しんさいニート』。被災者だけじゃなく、鬱の方にも読んで欲しい本。
東日本大震災がきっかけ
幼い頃からの強烈な自己否定感が著者が、東日本大震災を福島県南相馬で被災します。 東日本大震災が原因で鬱になったのではなく、震災がきっかけで鬱になってしまった著者の物語です。
被災当時のこと
著者の住まいは海から離れており、津波の被害はありませんでした。
ただ、福島第一原発事故の避難指定区域に入ったため、南相馬を離れ生活を送ることに。
震災直後の被災地の状況が誇張なく描かれています。
避難所に行くかどうかの選択など、情報が入ってこない中、著者と、その兄が決断したのは 故郷を捨てること。
兄夫婦の子どもを守るための選択でした。
新しい生活
著者一家は函館に生活を移すことになります。
著者は南相馬で陶器屋を営む自営業者だったんですが、新天地では開業も難しく美容師を目指します。
美容学校卒業後は東京の美容室に勤務が決まるんですが、職場の雰囲気が悪く、自分がすり減り、自己否定を繰り返すようになります。
表面上の付き合いに徹するために自分を殺し、自己否定を繰り返すうちにとうとう著者は鬱になってしまいます。
鬱になって
著者は、自己否定の中で自分が鬱になった根源が父親との関係と分析しています。
父親は権威主義的な考えの人で、「ねばならない」を強制する人でした。
美容室も育成がうまく機能せず、自分たちが新人だったときにやってきたことをフィードバックせずに繰り返す、「自分たちがしてきたんだから、同じことをしなければいけない」狭い箱の世界でした。
それが重なったことで鬱になった著者はカウセリングに通い始めます。
最初は信じられずにいたんですが、自分の中で考えるだけでなく、外に吐き出すことで徐々に上向いていきます。
生きる意味は見つけたものの、生きる術、つまり生活資金がない状況。
そこで著者はもともと絵が好きだったことを活かし、無職ながらも生きていく術として、この本を書くことになりました。
感じたこと
「しんさいニート」の題名ですが、震災で苦しんでいる方だけではなく、鬱病の方にも読んでほしい本です。
また、鬱病ではなくても現状に行き詰まっている方にも。
鬱になりやすい性格などありますが、それって育ってきた環境の影響が大きいと思います。
著者は父親との関係だったように、家庭環境って子どもにはどうする事もできない、そこで生きていくしかないんです。
児童館にくる子どもたちの様子は、家や学校とは全く違うといいます。
鬱になる人が多くなってきている世の中ですが、これからに向けて、子どもたちがいろいろな経験をできる場を作っていけたらいいですね。
自分もなるかも
そして保育業界も鬱になる職員や退職者が多いのが現状です。
この物語に出てくる美容室と同じような状況のところもあるんじゃないでしょうか。
いい加減やって当然という、悪しき業界の当たり前を改善しないと次がつながって来ないと思います。
もう少し環境や待遇が整って欲しいというのが私の本音です。